私が経験したトイレのトラブルは、まさに静かに、そして着実に忍び寄るようなものでした。ある朝、トイレ掃除をしようとしたときに、便器の右側の床が少しだけ光っていることに気づきました。指で触れてみると、それは間違いなく水でしたが、色は全くの透明で、特に嫌な臭いもしません。最初は家族の誰かが手を洗ったときの水が飛んだだけだろうと軽く考えていました。しかし、翌日もその翌日も、同じ場所がじわじわと濡れているのです。大量に溢れているわけではなく、拭けばすぐに消えてしまう程度の微量な浸出でした。この「透明で綺麗に見える水」という点が、かえって私の危機感を鈍らせました。もし茶色く濁っていたり、悪臭がしたりすれば、即座に修理を依頼したでしょう。しかし、無色透明な水がじわじわと広がっている光景は、どこか現実味がなく、しばらく様子を見てみようという甘い判断を生んでしまいました。数週間が経過した頃、床のクロスの色が微妙に変色し始めていることに気づき、ようやく事の重大さを認識しました。重い腰を上げて調べてみると、トイレの床がじわじわと濡れる原因には、目に見えない場所でのパッキンの劣化や、便器自体のひび割れ、さらには給水タンクからの伝い漏れなど、多岐にわたる可能性があることを知りました。私の場合、結局は温水洗浄便座のユニット内部からのわずかな漏水が原因で、それが本体を伝って床に溜まっていたのです。修理に来てくれた技術者の方は、透明な水だから大丈夫だろうと放置する人が多いのですが、それが一番危険ですよと教えてくれました。床下に水が回ればシロアリの原因になりますし、集合住宅であれば階下への漏水被害につながり、損害賠償問題に発展することもあるからです。この経験から学んだのは、トイレの床という場所において、あってはならない場所に水があること自体が異常事態であるという認識の重要性です。じわじわという言葉が示す通り、被害は静かに進行します。もし同じように床の湿りに悩んでいる方がいれば、それは住まいからのSOSサインだと受け止め、一刻も早く専門家の診断を受けることを強くお勧めします。