一般家庭において、心当たりのない水道料金の増加が発生した場合、その原因の約八割はトイレのタンク内トラブルであると言われています。特に「チョロチョロ」という微かな音を伴う漏水は、キッチンや洗面所の蛇口からのポタポタとした漏れに比べて気づきにくく、発見が遅れる傾向にあります。この現象が発生するメカニズムを理解することは、将来的な無駄な支出を防ぐために非常に有効です。トイレのタンクは、給水を司るボールタップと、排水を管理するゴムフロートという二つの主要な部品によって水位を制御しています。通常、水を流した後はタンク内の水位が下がり、浮き玉が下がることでボールタップが開いて給水が始まります。水位が一定に達すると浮き玉が上がり、自動的に給水が止まる仕組みです。しかし、このボールタップの弁にゴミが挟まったり、経年劣化によって閉まりが悪くなったりすると、給水が止まらなくなります。溢れた水は「オーバーフロー管」という安全装置を通って便器内へ排出されるため、タンクから水が溢れ出すことはありませんが、代わりにチョロチョロという音とともに水が永遠に流れ続けることになります。一方で、タンクの底にあるゴムフロートが劣化して形が崩れたり、鎖が絡まったりすると、便器へ続く排水口を完全に塞ぐことができなくなり、やはり水が漏れ続けます。水道代の計算において恐ろしいのは、多くの自治体が採用している「累進料金制」です。これは使用量が多くなるほど、一立方メートルあたりの単価が高くなる仕組みです。漏水によって普段の使用量の枠を超えてしまうと、漏れた水の量以上に料金が跳ね上がるリスクがあります。例えば、漏水によって使用量が二倍になった場合、料金は三倍や四倍になるケースも珍しくありません。たかが小さな音と侮らず、便器の水面が常に揺れていないか、タンクから音が聞こえ続けていないかを定期的に点検することは、家計管理における極めて重要なメンテナンス項目と言えるでしょう。
水道代の急騰を招くトイレの微細な漏水とそのメカニズム